京都カレンダー 夏
六月
京都は四季のうつろいが楽しめると言われている。ただ春から夏への移行はちょっとわかりにくいのかもしれない。『夏』の始まり、6月の雨季は山からの冷たい風で温度はさほど上がらず夜は涼しささえ感じる。本格的な夏の暑さを感じるのは梅雨明けからだ。5月にはツグミのさえずりが聴こえ、紫陽花があちらこちらで咲き始める。そして池や庭には蓮が青々とした葉っぱと共に大きなつぼみを膨らませる。
雨季の雨は優しく庭園に降り注ぐため、苔は嬉しそうにふかふかの絨毯をつくり、その横で曇った日でも、鮮やかな紫陽花がコントラストを作る。日本庭園を見るには最高の時期でもある。雨に濡れた庭の石はそれぞれの色を強調し、本来庭師さんたちが造りたかった庭の彩になるようだ。
夏の暑さをしのぐべく鴨川の納涼床が始まったのは約400年も前のこと。数々の天災、人災を経て、5月1日から9月1日まで開かれる『川床』が定着した。京都人は『ゆか』と呼ぶのでお店の方に「ゆかでよろしかあ?」と聞かれることもあるので要注意。鴨川の上流、貴船神社のある貴船川では川の流れを水面間近に聴ききながらお食事が楽しめる本来の川床を体験できる。6月1日に開催される貴船祭。年間通して美しい赤い春日灯篭と石段が続く貴船神社にこの日は神輿、お囃子の調べとヤマタノオロチを退治するスサノオノミコトの様子が見られる。
七月
そして7月1日には1か月続く祇園祭が始まる。由来は疫病を鎮めるため行われた千年以上前の神事。数千人とも言われる人が歴史ある神事を遂行し、今や祇園祭山鉾巡業は世界文化遺産に登録された。
山鉾巡業は過去2年間断念せざる負えない状況だったが、今年は復活が決定!山鉾は釘を使わず縄がらみの伝統手法のため、「1年に一度しかない実演のない技術の習得」を後世に伝授することが重要と祇園祭山鉾連合会理事長は語る。「人々を活気づけ、パンデミックを追い払おう」と朝日新聞が掲載している。同感!
山鉾巡業は7月17日の前祭(さきまつり)と24日の後祭(あとまつり)に行われる。それぞれに先駆け3日間の宵山行事は神事以外にも通りを封鎖し屋台や店頭での飲食の販売と、多くの浴衣姿で人々は昔ながらの祭りの雰囲気をつくる。一か月間流れるお囃子の音色コンチキチンが益々、まさしく街を「活気づける」。 京都の人は状況に合わせながらも歴史を守る工夫を凝らしている様子が見られる祭りになるだろう。
八月
8月7日から10日は、五条坂陶器まつりが清水焼発祥の地界隈で行われる。
「精霊迎え 六道まいり」のお参りに来られる人を目当てに始まった陶器市は夏の風物詩となっており、全国的にも最大規模と言われ、陶器好きには見逃せないイベントだ。
観光が主流産業の京都はお盆でもお店やレストランは営業しているところが多い。そのためお盆は最終日に向けてさらに盛り上がる。六波羅蜜寺から始まり、数々のお寺が灯篭を灯し、清水寺の夜のライトアップは3日間行われる。
16日、京都西側に位置する嵐山の桂川では出店が並び、精霊流しの準備が始まり、午後7時に火を灯した灯篭が静かに流される。一方、東の銀閣寺の山では五山送り火の「大文字」が点火され、「法」「妙」「舟形」、金閣寺の横の「左大文字」、最後に嵯峨野の「鳥居形」が追って点灯される。お盆の間、仏壇に戻ってきてくださった霊をお見送りするとき多くの日本人は自然と手を合わせてしまう。