建築設計・統括

ジェフリー‧ムーサス (Design 1st)

庭園設計

マーク‧ピーター‧キーン

源氏京都の庭

源氏物語では、庭園が重要な役割を果たしていますが、Genji Kyoto (源氏京都) でも、ロビー横の中庭、屋上のスカイ・フォレスト・ガーデン、各スイートルームのプライベート坪庭が大切なテーマになっています。

ロビー横の中庭は「浮舟庭」と命名しました。これは、コンテンポラリー枯山水庭園としてデザインされています。「浮舟」という名前は、源氏物語のほぼ最後の章の名から取っているもので、その章では、無名な少女が二人の男の熱烈な恋に振り回されました。

「浮舟」とは、その章にある歌に使われている人生のはかなさを表現し、次第にその少女の愛称となりました。「浮舟庭」では、船形石が浮舟を表現していますが、源氏物語の世界にとどまらず、生命を運んでいる地球自体が、銀河系を巡っている「漂流船」であることを示唆しています。

「浮舟庭」はコンテンポラリー枯山水庭園としてデザインされています。瑞峯院(写真下)の庭は、砂利が流れる水を、石は島や山を模している枯山水です。

 

大徳寺塔頭、瑞峯院の枯山水。『ジャパニーズ・ガーデン・ノート』より マーク・ピーター・キーン

 

屋上には、スカイ·フォレスト·ガーデン(天空·森のガーデン)があります。この庭園は源氏物語に登場する植物を集めたものですが、光源氏の庭園を模したものではなく、源氏物語に登場する自然の繊細さや複雑さへの情熱を表現したものです。

都会の喧騒から離れ、天空の森で、静かな癒しの時間を過ごしてみませんか?このような都会の中の隠れ場は、「市中隠」や「市中の山居」と呼ばれています。

 
 

Genji Kyoto (源氏京都) の各スイートルームには、これらの共同庭園に加えて、坪庭があり、それぞれの庭には古材石のオブジェが置かれています。「坪」は源氏物語が書かれた1000年前にはすでに使われていた言葉で、源氏物語では、そのような坪庭の隣に住んでいた宮廷の女性たちが、その庭にある植物を自分の名前にしたことから、「藤壺」や「桐壺」が物語に登場しています。

ホテルのガーデンデザインを担ったマーク・ピーター・キーン氏は、20年以上に渡り、ランドスケープ・アーキテクト、作家、アーティストとして京都でお仕事されています。庭園や自然に関する著書も多数手掛け、現在は、コロンビア大学中世日本研究所及び、京都芸術大学日本庭園歴史遺産研究センターの研究員として更に探求を深めておられます。氏の研究は自身の経験を活かし、東洋と西洋の美と哲学を融合させたものです。

キーン氏の最新作は『Of Arcs and Circles』(弧と円の) です。mpkeane.com