インテリアデザイナー、トミタ‧ジュンが語る

 
 

デザイン‧コンセプトはどのようなものですか。

視覚的センスは和風ですが、タッチとフィールは西洋的なコンフォートがあることです。これが私たちの新たな京町家デザインで成し遂げようとしていることです。

 
 

伝統と現代の快適さの出会いと言えますか。

京都は歴史に根ざしていますが、常に更新されています。革新と伝統が出会う場所であり、その美しさはデザイン細部にあります。客室の畳の横にある洋風のプラットフォームベッド、ホテル全体をつなぐ枯山水やつぼ庭、温かみのある和紙の照明に照らされるオリジナル家具、様々なディテールを現代の和デザインに埋め込んでいます。

 
 
 
 
 

家具はどのように選びましたか。

畳の床に快適に座れる理想的な高さと柔軟性を備えている、デンマークのヴェルナー‧パントンによるタタミ‧チェアの採用を除いて、すべての家具と大半の照明器具をデザインしました。

 

和室用椅子のデザインスケッチ トミタ ジュン作

 

客室には、オリジナルの玄関スツール、ソファとテーブル、たたみテーブル、設備の整ったライティングデスクがあり、すべて最高の快適さと機能性を実現するように設計されています。ロビーには、彫刻的なセンターピーステーブル、ユニークなソファとテーブルのセットがあります。

客室とロビーには Genji チェア

Genji スツールは客室入口の腰掛け用

ガラス棚付 Genji 和テーブル

Genji バースツール。バッグ置きにも便利な丸いモチーフはGenji 家具の特徴

すべての作品は、京都の二葉家具の職人と、日本のアルチザン活動の新潮流の最前線にいる革新的な職人で才能ある百々祥人+川邉公太郎のユニット、+veveによるハンドメイドです。

布張りの準備をする二葉家具の職人さん

二葉家具にて手造りの伝統家具

 

アルチザン活動の最前線にいる職人 百々祥人+川邉公太郎のユニット(+veve)

 

和のデザインの「繊細な洗練」を実現するために、私たちは職人の協力を得て、斜めにカーブされたエッジが繊細を極める、より薄い木板を作りました。結果として、伝統的な民芸様式に共鳴しつつも、型破りなスタイルを生み出しました。

 
 

『源氏物語』からどのようなデザインのインスピレーションを受けましたか。

平安時代の宮廷社会、建築、庭園を鮮やかに描写した源氏物語は、何世紀にもわたって日本の芸術表現のインスピレーションの源となって来ました。物語のイメージとメタファーは、絵画や掛け軸、美術工芸品や装飾、衣装のモチーフとして使用されて来ました。Genji Kyoto のお部屋にて京都の若手アーティストによる源氏物語のモチーフやイメージを活かしたテーマのある絵画をご覧いただけます。

 

『花散里(はなちるさと)』源氏物語第十一帖。源氏の恋人の名。器由香作

 

Genji Kyoto (源氏京都) のロビーは、源氏物語にインスパイアされた浮舟庭園につながっており、ゲストが庭に対峙したり、あるいはロビー向きに座れるように、背もたれがスィングするGenjiソファを作りました。

ロビーのセンターには、源氏物語の11帖(花散里)に記された橘の花をイメージした「たちばなテーブル」があります。また、漂流するカップルを乗せた「浮舟」をイメージした「うきふねソファ」も制作されました。

ロビーの Genji ソファはガーデン向きにもできる移動式背もたれ付 

橘の花をイメージした「たちばなテーブル」

 
 

Genji Kyoto (源氏京都) のテーマである四季をどのように融合させたのですか。

自然と四季は源氏物語の詩を彩ったり、お祭りを盛り上げるだけでなく、登場人物やその宮廷の隠喩でもありました。Genji Kyoto (源氏京都) ではどの客室からも四季折々の鴨川や東山の景色、または源氏物語の寝殿に由来する静寂な坪庭を観賞できます。坪庭はメインルームやバスルームにまで織り込まれ、空間構成のみならず、庭の舗装材を内部へ拡張することによって、外部と内部の連続性が実現されています。日本人は、平安時代の本来の中庭に始まり町家の坪庭に至るまで、屋内に居ながら自然や四季を取り込むことを永続的に探求してきたのです。

 
 

特にこだわった建材はありますか。

Genji Kyoto (源氏京都) の客室は、麻のタイル、桜の木の板、い草の畳、そして坪庭から延長されたタイルなど、さまざまな床の素材を組み合わせています。床の異素材は

美意識への好奇を触発するだけではなく、靴を脱いだり床に座ったりするための領域を画いています。放射床暖房を施してあるのでどこでも快適を感じながら、素足にさまざまな質感を体験いただけます!

 
 

どのような光と雰囲気を醸し出すのですか。

実はロビーで一番贅沢なものは、上部の窓にあります。二層分の高さにある窓を覆う銀を漉き込んだ大きな手漉き和紙です。自然光と室内照明のダイナミックな「うつろいの演出」がデザインされています。伝統的な紋様の美濃和紙で作られた天井照明は、和の雰囲気を作り出すために行灯と一緒に配置されました。バーとレセプションカウンターの上には、マットなブラックニッケルメッキのシェードに光沢のあるゴールドの内面を備え、輝きを加えました。

客室の照明は、和紙の光天井、ベッド周りの間接照明、調光可能な読書灯、床の行灯すべてが調和し、快適と静けさのある雰囲気をもたらしています。

 

Genji Kyoto のインテリアデザイナーであるトミタ‧ジュンは、一級建築士でニューヨーク大学でスタジオアートの学士号、東京電機大学で建築の学士号を取得しています。1999年に Atimont Design ( "Atmosphere of Time and Moment") を設立し、それ以来、建築、インテリア、プロダクト、グラフィック、写真、ブランディングにおいて「Waによるデザインイノベーション」を生み出してきました。トミタは京都を拠点に活動しており、京都芸術大学ではプロダクトデザイン、スタンフォード大学(京都プログラム)で「日本のデザインの禅:和の概念とその創造的応用」のコースを教える教授でした。トミタのオリジナルデザインの作品は京北にある古民家「蒼い熊」にて展示されています。