村瀬貴昭のスペースコロニーテラリウム

Genji Kyoto のロビーには、天井から吊るされたガラスの球体が、チェックインされるお客様の目に留まる。盆栽がLEDライトで照らされたランプのように見える。実は、これは植物、栄養素、リサイクルされた材料の生態系を支えるテラリウム。村瀬亜紀 (re:planter) によるスペースコロニーという作品だ。館内には4つのスペースコロニーが、四季のうつろいを楽しませてくれる。

テラリウムは19世紀から造られている。ロンドンのキューガーデンの植物学者が密封されたガラス容器でオーストラリア、アフリカ、アジアから植物を輸送したとき、ガラスの容器に密閉したそうだ。村瀬氏はアメリカ人の物理学者からこの『スペースコロニー』のアイディアを受けた。

「1960年代、アメリカの学者ジェラード·K·オニールは、他の惑星にドームを建設し、植物や他の生命体が循環できる環境を作り出す可能性の研究を始めました。それが彼のスペースコロニー計画でした。そこから思いつきました。」と京都の職人は最近のインタビューで語った。

村瀬さんは、現代の「消費者主義社会」でこんなにも使い捨てをしていいのかと少々反発心を持って疑問を投げかけ始めた。「私の仕事は、あらゆる植物、使い捨てられる材料、人工物を融合し、それらを生かせる新しいリサイクル方法です。」彼のソーシャルメディアの名前である『リプランター』は、京都に新しい価値を提案する消費社会に対する自然からの返信(Re:planter)をテーマにしていると、彼は述べた。

では、彼のテラリウム、スペースコロニーには何が入っているのか。土、廃棄された植物、鉄製のスクラップ製、錆付いた缶などリサイクルできるものは何でもである。そして、日本の生け花の技法で球体に入った盆栽を作り上げる。

 
 

幼少時代、祖父の家を訪ねて初めて盆栽に出くわした村瀬さんは、ミニチュアの松の木が魅力的であることに気づき、プラモデルのおもちゃを周りに並べてジオラマを作った。まるでウルトラマンの映像だと思った!

しかし、盆栽の植え方を知ることは始まりに過ぎない。ガラス容器の中で持続可能な環境を作るにはどうすればよいのか。

 
 

確かにガラスならば植物の成長のための熱と光を通す。植物からの水分は蒸発し、ガラスの面に凝縮したのち植物や土壌に栄養を与える。問題は、湿度や光が適量になるかだ。水分が多すぎると植物を痛めるカビが生えてしまう。光が多すぎると上部の植物が急速に成長し、下部への光を遮断してしまう。

そこで村瀬氏は太陽光の代わりにLED光を使用し、光の強度をリモコンで制御できるようにした。また、湿度に影響を与える空気循環を調整する装置を使用した。湿度が75%に達するとファンが作動し、空気が排出されて圧力が低下する。湿度が下がるとファンが止まり、空気が入り込む。まるで飛行機の空気循環のように働くのだ。IOT (モノのインターネット)ではできないことは、水をかけることだけ!彼のテラリウムは、他のすべてのテラリウムと同様に手で水をかける必要があり、これは2週間ごとに行われる。 

村瀬さんを紹介してくださったのは、Genji Kyotoのロビーに禅庭と全フロアを飾る小さな坪庭、更に屋上に美しいスカイフォレストガーデンを作庭したガーデンデザイナーのマーク·ピーター·キーン氏。ふたりのアーティストは、庭園、自然を通して、禅のアプローチを共有している。Genji Kyotoとのコラボレーションが始まり、彼らの素晴らしい作品は、ホテルのデザイン、スタイル、ユニークな雰囲気に大きく貢献している。

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